営業チームの議論精度と実行確度を高めた一冊 ── 『サーバントリーダーシップ』が育てた“聴くリーダー”の実務転移

変化の激しい市場環境の中で結果を出し続ける営業組織にとって、「話す力」や「提案する力」だけでは競争優位を維持できません。今注目されているのは、部門の知恵を引き出す視点、心理的負担を下げる問いの設計、そして信頼が循環するチーム文化です。

こうした土台を再設計でき、かつ業務への転移・再現性が高い一冊として、営業組織の人材育成担当者から改めて導入が進んでいるのが、ロバート・K・グリーンリーフ著『サーバントリーダーシップ』です。


書籍紹介:営業の“対話の入り口”と“リーダーの視点”を揃える、組織変革の原点書

『サーバントリーダーシップ』は、1970年代に提唱された「仕えるリーダー」という考え方を体系化した一冊です。従来の「上に立つリーダー」像とは異なり、まず相手の声に耳を傾け、必要な支援を行い、メンバーが主体的に動ける状態をつくることを重視します。

本書の大きな特徴は、リーダーを「指示する人」ではなく「メンバーや顧客の声に仕える人」と定義し直している点にあります。その中で、次のような要素が繰り返し強調されています。

  • 👂 メンバーの話を最後まで聴く姿勢
  • 🧭 組織全体の目的とメンバー個々人の成長を両立させる視点
  • 🗣 指示ではなく問いかけを起点とした対話
  • 🤝 相手をコントロールするのではなく、信頼関係を通じて自発性を引き出すスタイル

リーダーシップ論として読むだけでなく、営業チームにおける「会議の運営」「メンバーとの1on1」「顧客との対話」にもそのまま応用できるのが、この本の大きな強みです。


1. なぜ“聴くリーダー”が営業チームの成果に効くのか

サーバントリーダーシップの視点を取り入れると、営業チームのなかで次のような変化が生まれます。

  • リーダーの役割が「数字を管理する人」から「メンバーの本音を引き出す人」へ変化する
  • メンバー同士の関係が、「報告する・評価される」だけでなく「相談する・一緒に考える」関係へ変化する
  • 会議の入り方が「結果報告」から「なぜそうなったか」「どうすればよくなるか」を問うスタイルへ変化する

これらの変化は、すべて「聴くこと」を起点にしたリーダーシップのあり方から生まれます。本書を使った読書研修では、リーダーがまず自分自身のスタイルを振り返りながら、「どのような問いかけならメンバーの本音を引き出せるか」を具体的に考えるきっかけになります。


2. 読書シェア研修としての活用ポイント

『サーバントリーダーシップ』は分厚く抽象的な部分もあるため、研修では「分担読書+意見シェア」の形式が特に効果的です。

(1)章ごとの分担読書

リーダー候補やマネジャー層に対して、1人あたり1章〜数章を担当してもらい、以下の観点でまとめてもらいます。

  • 心に残った一文・一節はどこか
  • それがなぜ印象に残ったのか(自分の経験と結びつけて)
  • 営業チームのマネジメントにどう活かせそうか

(2)「問い」を中心に議論する

読後のディスカッションでは、「何が書いてあったか」の要約よりも、「この考え方をチームに持ち込むには、どんな問いから始めるべきか」を話し合う方が現場の行動に直結しやすくなります。

例えば、次のような問いが挙げられます。

  • メンバーが安心して本音を話せるようにするために、リーダーが変えるべき言動は何か
  • 数字が厳しいときでも、メンバーの成長を一緒に考えるための問いは何か
  • 顧客との関係性にサーバント的な姿勢を取り入れるとすれば、何から始められるか

3. 実務シーンでの「Before → After」

(A)営業ミーティング

Before:
・各自が売上数字と案件状況を報告するだけ
・リーダーからのコメントは「頑張ろう」「ここを増やそう」といった指示中心

After:
・会議の冒頭でリーダーが「今いちばん困っていることは何か」を全員に質問
・その上で「リーダーとして何が支援できるか?」をメンバーと一緒に考える時間を確保
・数字の議論は「何が障害になっているか」「どうすれば外せるか」という対話形式に

(B)1on1ミーティング

Before:
・リーダーが進捗を確認してアドバイスを与える形式
・メンバーは「上司に評価される場」と認識し本音を話しづらい

After:
・リーダーがまず「最近うまくいったこと」「不安に思っていること」を聴く
・メンバー自身に「次の一歩」や「自分なりの改善案」を言語化してもらう
・リーダーは「決める」のではなく「背中を押す」役割に徹する

(C)顧客との関係構築

Before:
・自社商品の説明・提案が中心
・顧客の本当の課題や、感情的な面に踏み込めない

After:
・顧客の状況や社内の事情、担当者の悩みなどを広く聴く時間を意図的に確保
・「そのうえで、当社としてどんなサポートができるか」を一緒に考えるスタイルへ
・結果的に、中長期の関係性や紹介案件の増加につながる


4. 実際の導入企業の声(イメージ)

営業部マネジャー(IT企業)
「数字が未達のときほど“詰める会議”になりがちでしたが、この本を読み、聴くことを意識した結果、メンバーから自然と改善案が出るようになりました。」

リーダー候補(人材サービス業)
「これまでは自分が先に答えを出してしまいがちでしたが、あえて“どうしたい?”と質問するように変えたことで、メンバーの主体性が目に見えて高まりました。」

営業企画担当(メーカー)
「リーダーシップ=強く引っ張ることだと思っていましたが、“支えるリーダー”という視点を持ってから、会議での発言内容も変わりました。」


5. 研修担当者向けの設計ポイント

  • 全員に精読させるのではなく、リーダー候補や管理職を中心に分担読書にする
  • 要約よりも「心に残った一節」と「具体的な行動アイデア」を話してもらう
  • 読書会の後に、実務での変化(ミーティングの進め方、1on1の質問、顧客との対話など)を振り返る場を設ける
  • 1〜3か月後に、再度ショートセッションを行い、継続的な変化を確認する

まとめ

  • 『サーバントリーダーシップ』は、営業に「聴くリーダー」という新しいリーダー像をもたらす
  • 分担読書と対話を組み合わせることで、リーダーの言動が変わり、チームの空気が変わる
  • 結果として、メンバーの主体性が高まり、議論の質と実行確度が向上する

「読ませる」ことを目的にするのではなく、「本をきっかけに、リーダーとチームの対話を変える」ことを目的としたとき、『サーバントリーダーシップ』は非常に力強い研修ツールになります。次のリーダー育成施策の1つとして、検討してみてはいかがでしょうか。

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