ビジネス書の選び方で変わる研修成果 ── テーマ設定が社員の成長を左右する
同じ「読書研修」でも、どの本を選ぶかによって得られる成果は大きく異なります。 それは単に“面白い本”かどうかではなく、組織の課題や社員の成長ステージに合っているかで結果が変わるからです。
この記事では、研修担当者が押さえておくべき「テーマ別・目的別の選書の考え方」と、実際に成果を上げているビジネス書の事例をご紹介します。
目次
本選びは“課題解決”の出発点
研修の目的が曖昧なまま本を選ぶと、「良い話を聞いた」で終わりがちです。 一方で、明確なテーマを定めて選書すれば、学びが現場行動に転化しやすくなります。
たとえば「若手社員に主体性を持たせたい」ときと、「管理職に心理的安全性を理解させたい」ときでは、当然読むべき本が異なります。 研修のテーマを“現場の課題”から逆算することが、選書の第一歩です。
テーマ別・目的別に見るおすすめの選書軸
(1)リーダーシップ育成
チームマネジメントやリーダーの姿勢を学ばせたい場合は、以下のような本が効果的です。
- 『サーバントリーダーシップ』ロバート・K・グリーンリーフ
- 『リーダーの仮面』安藤広大
- 『ティール組織』フレデリック・ラルー
共通しているのは、「部下を動かす」よりも「信頼を築く」リーダー像を提示している点。 読後のディスカッションでは「自分の部署ではどう行動するか」をテーマにするのが効果的です。
(2)若手社員の主体性・自律性向上
新入社員や中堅層に「考える力」を育てたいときは、思考系・働き方系の書籍を選びます。
- 『イシューからはじめよ』安宅和人
- 『7つの習慣』スティーブン・R・コヴィー
- 『自分の中に毒を持て』岡本太郎
いずれも「他人の期待ではなく、自分の意志で動く」というメッセージが根底にあり、若手社員の自己理解やモチベーション醸成に直結します。
(3)チームの心理的安全性・コミュニケーション
風通しの良い組織づくりを目指すなら、コミュニケーションや対話を扱う本が効果的です。
- 『人を動かす』D・カーネギー
- 『ファシリテーション入門』堀公俊
- 『チームが機能するとはどういうことか』エイミー・C・エドモンドソン
特に最後の『チームが機能するとはどういうことか』は、心理的安全性という概念を理論と実践の両面から学べる名著。 職場での関係性改善を目的とする研修に最適です。
(4)イノベーション・発想力研修
変化の激しい業界では、既存の枠を超えた発想を促す本が鍵になります。
- 『ゼロ・トゥ・ワン』ピーター・ティール
- 『アイデアのつくり方』ジェームス・W・ヤング
- 『未来をつくる起業家』田中禎人
ディスカッションのテーマは「自社で新しい価値を生み出すには?」。 特にスタートアップや新規事業開発チームに向いています。
成功する選書の3つのポイント
① “共感”より“転用”を意識
「良い話だった」で終わらせず、現場への応用を意識させることが重要です。 「この考えを自分の業務にどう当てはめるか」を必ず問いに含めましょう。
② 異なる立場のメンバーで読む
営業・開発・管理職など、異なる部署で同じ本を読むことで、意見交換の幅が広がります。 多様な視点こそが学びの深さを生みます。
③ 短くても「考える」時間を確保
全章を読む必要はありません。1章・1節を読んで語り合うだけでも効果は十分。 要は「読む量」より「考える質」です。
実際の導入事例
- 食品メーカーA社:『7つの習慣』を新入社員研修に導入。読書後に「自分の行動宣言」を作成させたところ、3か月後の定着率が前年より12%向上。
- 通信業B社:管理職層が『ティール組織』を分担して読了。組織変革プロジェクトの起点となり、チーム制度改革が実現。
- サービス業C社:『人を動かす』を営業部全体で読書共有。顧客満足度調査で「対応の丁寧さ」が前年比18%向上。
「本を選ぶ」ことは「学びを設計する」こと
読書研修の本質は“本を読むこと”ではなく、「何を学び、どう変わるか」をデザインすることにあります。 社員が抱える課題、組織が目指す方向性、そして今求められているスキル──。 その交点にある一冊を選ぶことで、学びは単なる知識ではなく、行動へと変わっていきます。
まとめ
- 選書は「課題解決」の起点になる
- テーマ設定と目的の明確化が成果を左右する
- リーダーシップ・思考力・心理的安全性・イノベーションなど目的別の選書を
- 「読む量」より「考える質」を重視する
社員一人ひとりの学びがつながり、チーム全体が成長していく。 その第一歩は、たった一冊の本の選び方から始まります。
BOOK to ACTIONでは社内読書会導入のお手伝いを本の選定からお手伝いをさせていただいています。
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