社内で学びを文化にするためのファシリテーション術 ── 読書会・研修を活性化させる「進行力」の磨き方
どんなに良い本を選び、どんなに優れた研修を設計しても、場の空気が固ければ学びは深まりません。 社員が自由に意見を交わし、互いに刺激を受け合う場をつくるには、ファシリテーション(進行)の力が欠かせません。
この記事では、「学びを文化に変える」ための社内ファシリテーション術を、読書研修やチーム勉強会にすぐ活かせる形で解説します。
目次
ファシリテーターの役割は「教える人」ではなく「引き出す人」
ファシリテーターとは、知識を提供する人ではなく、参加者の中にある知恵を引き出す人です。 全員が自分の考えを持ち寄り、安心して話せる空気をつくることが何より重要です。
読書会や研修の場では、「どの意見が正しいか」を決める必要はありません。 むしろ「なぜそう思ったのか?」を問いかけることで、参加者同士の学びが広がります。
学びの場をつくるファシリテーションの基本ステップ
(1)場の目的を最初に共有する
最初の5分で「この場は何のためにあるのか」を明確にします。 例:「今日は本を正しく解釈することではなく、仕事に活かすヒントを見つけることが目的です」 目的を共有することで、安心感と集中力が生まれます。
(2)発言しやすい“導入の問い”を用意する
いきなり意見を求めると沈黙しがちです。 「印象に残った言葉は?」「著者に一つ質問できるなら何を聞く?」など、軽い問いから始めましょう。
(3)全員の声を拾う
発言が偏らないよう、発言が少ない人に「〇〇さんはどう思いますか?」と優しく促します。 一方で話が長くなりすぎた場合は「ほかの方の意見も聞いてみましょう」と切り返すバランスも重要です。
(4)対話を“整理”する
議論が広がったら、「ここまでの話をまとめると…」と一度整理します。 ファシリテーターが内容を要約することで、参加者の思考が整理され、次のステップに進みやすくなります。
(5)学びを「行動」に結びつける
最後は「明日からできる一歩」を全員に宣言してもらう形で締めくくります。 これにより、学びが一過性ではなく行動につながります。
よくある失敗とその回避策
- 失敗①:話が盛り上がらない → 「Yes/Noで答えられない問い」を準備する
- 失敗②:一部の人だけが話す → 3〜4人の小グループに分けて発言機会を増やす
- 失敗③:議論がまとまらない → 途中で要約し、主な論点を可視化する
ファシリテーションは“技術”であり、“センス”ではありません。 経験を重ねるほどに自然と上達していきます。
実際の導入事例
- メーカーA社:月1回の読書研修で、リーダーが交代制ファシリテーターを担当。話すより聞く姿勢を学び、会議全体の雰囲気が改善。
- 教育B社:ファシリテーション研修を先に実施し、全社員が「問いを立てる練習」を体験。その後の社内勉強会で発言率が倍増。
- IT企業C社:リモートでのオンライン読書会にファシリテーターを設置。チャット機能で「気づき」を拾い上げる運用にし、遠隔でも一体感が生まれた。
ファシリテーター育成を“仕組み化”する
ファシリテーションを一部の人のスキルに頼らず、社内の文化として根づかせるには、以下のような仕組み化が有効です。
- 社内で「ファシリテーター育成プログラム」を設ける
- 会議や勉強会で交代制進行役を導入する
- 上手な問いかけや要約を共有する「ファシリテーションTips集」を作成する
こうした仕組みが整うと、ファシリテーションは“特別なスキル”ではなく“日常の会話術”として根づきます。 それが結果的に、学びが循環する組織文化を支える基盤となります。
まとめ
- ファシリテーターは「教える人」ではなく「引き出す人」
- 目的共有・導入の問い・全員参加・要約・行動宣言の5ステップで進行
- 話が偏る・沈黙する・まとまらない時の回避策を準備
- 交代制・研修・Tips共有でファシリテーションを文化にする
ファシリテーションは、組織の“学ぶ力”を底上げする最強のスキルです。 上手に問い、丁寧に聞き、前向きにまとめる──その積み重ねが、学び続ける企業文化を形づくります。
BOOK to ACTIONではテーマに沿った本の選定から、ファシリテーターとして会の進行まで、社内読書会導入の支援を行っております。
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